愛してるの代わりに


まどろむ意識の中から覚醒し、雛子は小さくあくびをした。

下腹部に広がる鈍い痛みは、恐らく未来の言っていたものなのだろう。

この歳になって初めて経験する痛みに、何とも言えない気持ちになって、思わず苦笑いがこぼれる。

寝返りを打とうとすると自由に身動きの取れない自分に気付いた。

背中の方に顔を向けると、そこには雛子を抱きしめる格好の慎吾の両腕。

正面にある慎吾の寝顔は、とても安らかで、いつもより少し幼い。

昨夜見た、色っぽい大人な慎吾の顔とのギャップに驚きつつも、やはり寝顔の方がしっくりくるな、などと冷静に観察してしまう。

そっと頬に手を当てた瞬間、慎吾の目がパチリ、と開き、思わず手を引っ込めたが、慎吾はすぐに目を閉じてしまった。

よかった、気付かれなくて。

そんな風に思いながらもう一度手を当ててみようかなあ、なんて思っていると、再び慎吾の目が開き、雛子をギュッと抱きしめた。






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