愛してるの代わりに
「仕事終えて東京から戻ってきてたら遅くなるから、ちょっと言えなくてね。それにここだけの話、崎坂さんの方が口が堅いから安心なんだ」

中塚の言葉に大きくうなずきながら、広報課長が手を合わす。

「崎坂さんのところの課長にも話はつけておいたから、お願いできないだろうか」




雛子としては特に断る理由もない。

何せ諦めていた『クリスマスに恋人に会う』ことが、仕事とはいえ出来るのだから。

それに、仕事中の慎吾の姿も見られて一石二鳥ではないか。

「わかりました、よろしくお願いします!」




そして、12月24日がやってきた。




「おはようございます」

「おはよう、今日はよろしくね」

早朝、中塚と最寄駅で合流し、東京へと向かう。

「ごめんね、こんな時期に出張頼んだりして」

「気にしないでください」

彼と約束していたわけでもないので。

と言いかけて、言葉を飲み込む。

中塚が前と変わらぬ態度で接してくれるおかげで普段は忘れているが、彼に告白されてからまだ数か月しかたっていない。

中塚のおかげで勇気が出て告白し、それで恋人同士になったなんて、まだちょっと気まずくて報告できない。

しかし、時がたち、変化があったのは雛子だけではなかったようで。

「僕は正直、撮影が今日になってちょっと慌てたよ。彼女と約束してたからね」

「え、彼女!?」

「……実は、崎坂さんに気持ちを伝えた後、親からの見合い話を受けたんだ。それで、縁あって素敵な女性と出会うことができて、今結婚を前提にお付き合いしているんだ」

少し頬を染めて照れくさそうに語る姿が幸せそうだ。

「大丈夫だったんですか? 彼女さん」

「ああ、仕事の都合で待ち合わせを遅らせてほしいって言ったら、少し残念がってたけどわかってくれたよ」




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