愛してるの代わりに
ところで、と中塚が少しだけ意地悪そうな笑顔を見せる。
「崎坂さんの方はどうなったのかな? 僕にも知る権利はあると思うけど」
まさか自分の方に話を振られるとは思ってもなかった。
少し動揺した気持ちを落ち着かせ、雛子のほうも恋が実ったことを報告すると、中塚は自分のことのように喜んでくれた。
「それなら余計、今日出張お願いしたのが申し訳ないなあ」
「そこは気にしないでください。彼も忙しくて今日会う約束とかしていたわけではないので」
実際、今日の慎吾のスケジュールは今回のポスター撮影だ。
毎日のように何かしらの連絡は取っているが、慎吾の口からクリスマスに関しては一言。
「クリスマスも仕事で会えない。ごめん」
それだけだった。
役所内でもまだ知られていない仕事だから、雛子にも詳細は言えないのだろう。
思わず、「その仕事、私も絡んでるから。会いに行くから!」と言いたくなったが、実際慎吾とどのタイミングで会えるのかがわからない。
雛子の状態で会うことなどなく、たぬ郎の姿で会うだけということも考えられるからだ。
市の仕事が終わった後、慎吾に時間があるかもわからない。
それを考えると、最初から話さないほうがいいかも知れない、と雛子も今回の東京行きの件は慎吾に伝えていないままだった。
一瞬でもいいから、話くらいできるといいな。
そんな雛子の淡い期待を乗せ、ふたりの乗った新幹線は東京へと向かっていた。