愛してるの代わりに
新幹線を降り電車に乗り継ぎ、待ち合わせのビルへとたどり着く。
受付をすませしばらくすると、エレベーターからひとりの女性がやってきた。
「中塚さんですね。私、宮脇のマネージャーをしております早見と申します」
こちらへどうぞ、と早見に促されエレベーターへと乗り込む。
エレベーターは3階へ止まり、ふたりは応接室へと通された。
「宮脇を呼んでまいります。こちらで少々お待ちください」
早見が部屋を出るのを見届けた後、雛子は中塚に気付かれないように小さく息を吐き出す。
早見の話だと、撮影の前に慎吾に会うことができそうだ。
そしてもうひとつ。
慎吾から時々出てくる「早見さん」なる女性に会えたことも嬉しい出来事だ。
『東京のお母さん、って言ったら早見さんに怒られるかも知れないけど、お姉さんっていうよりも、お母さんって言った感じなんだ』
と言って慎吾から聞く早見とのエピソードは、いつも見守ってくれるマネージャーとの心温まる話ばかり。
聞いていた年齢よりも若々しく見える、まさに『美魔女』とも言うべき早見の姿に、雛子は心の中で頭を下げていた。
コンコン。
応接室のドアがノックされ、中塚と雛子はソファから立ち上がる。
入ってきたのは早見と、もちろん慎吾。
「宮脇です、今日はよろしくお願いしま……!!」
す、と言いかけた慎吾の動きが止まった。
雛子を視界に捉えてパクパク金魚のように口を広げている。
「もしかして宮脇さんは崎坂と知り合いですか?」
「あ、はい。中学まで同級生で。な?」
「は、はい。そうなんです」
「だったら先に言ってくれればいいのに」
笑顔の中塚に少しだけひきつった笑いを返す。
慎吾の笑顔も同様だ。