愛してるの代わりに
「じゃあね、崎坂さん。また来週。お疲れ様」
「お疲れ様でした」
目が合うとポン、と肩を叩かれた。
「メリークリスマス。楽しい夜を」
「中塚さんも。いいクリスマスになりますように」
笑顔で中塚を見送り、方向転換。
瞬間、腕を取られ、先程まで着替えをしていた部屋へと連れ込まれる。
バン、と扉が閉められ、腕をつかんでいた手が離れる。
「慎くん、腕、痛いよ」
「……っ、ごめん」
「今日のこと、黙っててごめんね。慎くんとちゃんと会えるかどうかわからなかったから、言えなくて」
「…………」
「で、でも。今日はこのまま職場に帰らなくても大丈夫なように中塚さんが話してくれたの。だから、慎くんの用事がなかったらっ……んっ……」
いつもより荒々しく唇が塞がれる。
「は……あっ……」
解放された時には息も絶え絶えになっていた。
ひとりでは立っていられない雛子を慎吾がソファへと座らせる。
「……雛が俺と仕事すること黙ってたのはもう怒ってない。早見さんに理由も聞いたし」
雛子の横に座り、まだ少し拗ねた表情の慎吾が話し出す。
「ちょっとだけ、ヤキモチ妬いた」
「ヤキモチ……?」
「……雛の職場の先輩。いつでも雛に会える距離にいるし、何気にかっこいいし」
なんだ、そういうことか。
「何笑ってんだよ」
「ごめん。何だかちょっと嬉しくて」
慎吾が女性と絡む仕事を目にする度に何ともいえない感情がいつも心を支配していた。
気持ちが伝わった今でも、それは変わらない。
「私だけじゃないんだな、と思って。ヤキモチ妬くの」
「当たり前だろ。俺だって離れてて不安になることだってあるんだよ」
嬉しくなって抱きつくと、倍の力で抱きしめてくれる。
「大丈夫だよ。中塚さんには帰ってからデートの約束してる彼女がいるから」
夏に告白されたことは黙っておこう。
すっかり機嫌の直ったらしい慎吾の笑顔を見て、雛子はこっそりと秘密を抱えたのだった。