愛してるの代わりに
私の隣に彼がいるのは当たり前だった。

それが幸せなことだなんて、全然気が付かなかった。

これから先もずっと、私は彼の隣にいるものだと思ってた。




でもそれは違った。

小さい頃、彼は言った。

「僕たち、家族みたいなものだから」と。

そう。

みたいなもの、であって私たちは家族、ではない。

私と彼はただの幼馴染なのだ。

これから先、彼の隣にいるのは彼が好きになった女性だ。

私ではない、他の女の子が彼の隣を歩くことになるんだ。




なんでこうなるまで気付かなかったの?




いや、そうではない。




「こうなるまで気付けなかったんだね、バカ雛子……」

自分の鈍感さは自分が一番自覚している。

誰もいない放課後の教室で、雛子はひとり、大粒の涙を流し続けた。




中学2年、夏。

初恋を自覚した瞬間、失恋した夏。


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