婚約者の憂鬱
「どーすんだよ、カイ。当てはあるんだろうな?」
そっと黒髪の司祭に耳打ちする。
このまま、おとなしくしていても事態は好転しないだろう。
問われたカインは、迷惑そうに溜め息をついた。
「とりあえず、今はハーベスト卿に頑張ってもらいましょうか」
「ふが?」
眠っていたはずのアレックスが、ぱちりと目を開けた。
カインは特に気にもせず、盗賊たちを顎でしゃくった。
「好きに動いてください。天上の神々は、あなたの味方です」
「おまえが言うと、めちゃくちゃ怪しいな」
聖職者に対してひどい言いようだが、いちいち文句をつけるカインでもない。
不意に、アレックスが勢いよく立ち上がった。
「じゃ、お言葉に甘えて」
鳶色の瞳が、猫科の動物のように煌めく。
盗賊たちが反応する暇も与えず、アレックスが走り出す。
両手を塞がれているというのに俊敏な動きだった。
「貴様ッ!」
盗賊たちが剣を構えれば、アレックスは真ん中を駆け抜ける。途中で何か、カチリと音がした。
それと同時に、彼らの頭上から大量の槍が降り注ぐ。