オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「梨聖の前では、こころ痛めてたかもしれないじゃない」

ふたりは拮抗している。

「帆乃香、いいのよ。私は大丈夫だから」

私は彼女の腕をほどいた。

「大丈夫じゃ、ないでしょう」

潤んだ瞳で、帆乃香は私を見つめる。

「大丈夫。こんなことで、鈴と喧嘩しないで」

「うん。解った」

帆乃香は私から離れると、鈴に抱きついた。

「鈴~。ごめん」

「はいはい、大丈夫だから。私も少し言い過ぎたわ」

苦笑して、帆乃香の抱擁を受け入れる鈴。

「――日本酒が飲みたいわ」

ぽつり、とさやかが呟く。

「あんた、お酒強かったっけ? だけど、そうよね。飲みたい夜もあるわよね」

鈴に抱きついたまま、顔だけをさやかに向けて、帆乃香が言う。
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