Le Petit Princesse
フローラはどこに行く気もなかったが、何となく中庭に来ていた。




当然だが中庭には誰もいなかった。





しばらくしてフローラは、誰か人影が近ずいて来るのに気が付いた。








ーーエリック…?







「こんな所にいたんですね!」






だがその人影はエリックではなく、ブライアン王子のものだった。







「いやぁ、急にいなくなるからどうしたのかと…!」






ブライアン王子は笑顔を崩さず、愛想よくフローラに近づいてきた。


フローラは自然と後退りをしてしまう。






「気分でも悪いのですか?」


「いや、別に…。」






少しの沈黙の後、ブライアンが口を開いた。





「…僕の好きな色なんです、赤って。」


「…え?あ、あぁ…。」






フローラはアマンダが言っていた事を思い出した。





「でも私にはこのドレス、似合ってるとは思いません。肌の露出も多いし…」


「似合ってますよ。昼間に会った時とは雰囲気が違って…何かドキドキしますね。」






ーー本当に嫌味にしか受け取れない。






「僕のいる国って、この国とは違うんです。」


「えっと…?」


「この国は魔法使いの国ですよね。でも僕の国は吸血鬼の国なんですよ。」


フローラは"吸血鬼"という言葉に血の気が引いた。



「吸…血鬼…?」


「えぇ。」

そう言ってニコッと音が出るくらいに笑い、いきなりブライアンはフローラを押し倒した。


「フローラ様って、すごくいい匂いがするんですよね…上質な血の匂い。パーティーに来ている吸血鬼が僕だけで良かったですね?」






そう言って、ブライアンは舌舐めずりをした。


フローラは逃げるように動こうとしたが、ブライアンが上に乗っていて動けない。





「…やめてっ!」






ブライアンはフローラの首筋に舌を這わせた。



フローラは嫌に鳥肌が立った。

< 36 / 94 >

この作品をシェア

pagetop