EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「あんたがここやって」
一佳が自分の担当場所を月那に示す。
もう十一歳ということで屋敷の簡単な掃除を任されていた月那達。
「氷河さまの部屋の掃除はあたしがするから。月那はトイレね」
「え、でも…」
本当なら今週は月那が氷河の部屋掃除、一佳がトイレ掃除のはずだ。
反論しようとした月那だったが…。
「早くトイレ行けよ!」
ドンと身体を押され、気弱な月那は逆らえなかった。
近くに桃もいたが、自分に火の粉がふりかかるのが恐ろしいのか、さっきからダンマリだ。
助けはない。
雑巾とホウキを持って、月那はしぶしぶトイレに向かった。
「あれ?月那?」
「駿くん…」
トイレ掃除中、たまたま通りかかった駿が月那を見て目を見開いた。
「何やってんだ?月那、今日はトイレ掃除じゃないよな」
「うん……ちょっと…ね。替わったの」
「一佳と?」
「うん」
普段と同じ表情で微笑む月那。
しかし、なんだか違和感を覚えた駿はふと思い出したことを尋ねてみた。
「なあ。なんか昨日、寝る前に大声出してたけど……お前らケンカでもしたのか?」
「し、してないよ!大丈夫!」
「本当か?本当に大丈夫なのか?」
コクコクと勢いよく頷く月那。
違和感は消えなかったが、駿は月那を信じることにした。
「なんかあったら言えよ」
「うん。ありがとう…」
笑って見せたものの、それから一佳のイジメは更にエスカレートしていった。