吸血鬼くんの話、
ひかりが規則的な寝息をたてているのを確認し、部屋を出る。
廊下まで漂う、ご飯のいい匂い。
満月、うまくできたのかな。
「満月ー?」
キッチンに様子を見にいくと、満月はコンロの前に立っていた。
「ん?今は蒸らしてるからもう少し待っとけ。土鍋があったから使わせてもらったぞ」
コンロの上には、鍋の時ぐらいしか使わない土鍋。
施設の人からもらったちょっといいやつ。
それで、ご飯炊いたのか…。
「土鍋のご飯って初めてだな…。うまいのか?」
炊飯器になれてるから、土鍋のご飯を見るのは初めてだ。
「ああ。うまいぞ。…それと、雑炊なら私一人で作れるぞ。明も休んだらどうだ?あの…えっと…ルーニャ…だったか?すごかったから心労が溜まっているだろう。出来上がるまで休むといい」
満月は俺に休むように進めた。
確かに疲れている。
眠気もひどい。
「じゃあ、少し休むな。何かあったら遠慮なく起こしてくれ」
俺はあとを満月に任せ、眠ることにした。
でも、昼間に深く眠れるわけではないから、布団に入っても無意味。

なら、ひかりのそばにいた方がいいか。

俺はひかりのそばで、居眠りでもしようかなと、思い、ひかりの部屋に入る。
相変わらず幸せそうな顔をして眠るひかりに思わず頬が緩むがここには誰もいない。
「ひかり。…元気に、なれよ」
ひかりのベッドのそばに座り、体重をかける。
微睡む気持ちのいい空気。
いつのまにか、俺は眠っていた。
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