俺、共犯者と秘密共有中。
 美咲ちゃんは勢いよく振り返った。


 その拍子に、大きな目から雫が溢れる。


「……好き、……じゃ、ない。」


 そしてハッとしてまた俯いたかと思うと、ぽつんと言った。


 俺は微かに心を痛めながらも、彼女の腕を握る手にきゅっと力を込めた。


「……聖也から、……全部聞いたんだ。」


 細い肩が、びく、と小さく揺れた。


「……それで俺、このままじゃ終わりたくないって、……。」

「ダメなの。」


 美咲ちゃんは、涙声で俺の言葉を遮った。


「それなら、わたしのしたこと、……全部知ってるでしょ。聖也の嘘に気づいたからって、しちゃダメなことしたの。だから、……ダメなの。

 わたし、最低だから、……自分だけ幸せになんてなれない、純平くんだって、もっと素敵な人、すぐ見つかるよ。」


 そして最後まで言い切ると、俺の掴んだ手を軽く引いた。


 俺の頭に、聖也の言葉が浮かび上がった。


 ――『俺さあ、映画とかドラマとか、……全部ハッピーエンドが好きなんだよね。』


「せ、聖也は!……聖也は、自分のことよりも、俺たちのこと、応援してくれてて、……ハッピーエンドが好きだって、言ってた……。

 俺、ほんとにそれがなかったら、今ここに来てないと思う……。だから、……その気持ち、無駄にしたくないっていうか……。」


 ゆっくりと顔を上げた美咲ちゃんの頬には、涙が伝った軌跡が残っていた。


 俺は、もう一度聞いた。


「……俺のこと、好き?

 ……もし、そうじゃないなら、何も言わなくていいから。」


 そして、強く掴んだ彼女の腕をするりと離す。
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