孤独女と王子様
"里絵子さんか。それは貴重な時間だな"

ケン兄さんも、僕の母とは成瀬川邸で数年一緒に暮らした仲だ。

"今夜、ちょっと会えないか?"

やっぱり来た。
ケン兄さんの事情聴取。
間違いなく由依ちゃんのことだ。

「分かった。それならスラジェに行かない?」
"スラジェ?あぁ、三輪さんのお店か。分かった。そこで夕方17時ね"
「17時?兄さん、仕事は?」

その会話の最中に母さんが到着し、僕の向かい側に座った。

"大丈夫だよ。俺は割と自由だから"
「うわ、何だか偉い人みたいな発言」
"営業職は自由に時間を作れる時があるの。じゃあね"

と、一方的に電話が切れた。
母さんと待ち合わせていることに気を使ってくれたのだろう。

『誰と話していたのよ』
「ケン兄さんだよ」
『あら、確かに女の子との会話には聞こえなかったけど、たまには付き合っている女の子の話はないのかね。アンタ慎重になりすぎなんじゃないの?』
「そういうわけじゃないけど・・・」
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