孤独女と王子様
『僕はこの春、【首都出版販売】という"出版取次"に入社をしまして、わかば堂書店の"帳合"がうちだったものですから、その縁で新入社員の数名が今日のイベントの手伝いをした、その打ち上げで…』
「由依に飲ませたわけだ」
『はい…』

"出版取次"とか"帳合"なんて、業界の専門用語をわざわざ使っている。
僕を試しているのかな。

それらは、由依ちゃんから聞いていた言葉だから、意味は知っているけどね。

出版取次は、出版物の問屋さんのようなもの。
帳合は、元々は"帳簿を合わせる"っていう意味らしいけど、この場合は書店が契約している出版取次の会社のこと。

伊達に由依ちゃんと毎週のように語らっていないよ。

そう思っていると、ベッドに寄りかかる形で座っていた僕の背中を何かが当たるような感触が…

ん?由依ちゃんの指?
明らかに僕の背中をつついている。

振り向くと、由依ちゃんは寝ているようにも…見えたけど、由依ちゃんは目を開けて僕にウインクをした。

もしかして、酔ったフリ?

由依ちゃんは僕よりお酒は強いはずだ。
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