孤独女と王子様
『新しい恋、見つけてよ』

彼はそういう由依ちゃんに向かって微笑んだ。

『恋の前に、まずは仕事だよ』
『そうだね』
『周りに認められるような社会人目指して、地道にがんばるよ。しばらく恋はお預けかな』

"では僕は、タクシーで帰ります"と出ようとしたから、僕は会社で緊急用に支給されているタクシーチケットをあげた。

「今の時間だと割増料金だし、新入社員には厳しいだろ?」
『ありがとうございます。神戸も、頑張れよ』
『うん、ありがとう』

出て行く彼の背中を見送った僕達。

『剛さんはつくづく、優しい人だと思う』
「僕は、由依ちゃんがただ好きで甘やかしたいと思うだけの、ただの男だよ」

だから、もっと甘やかそう。

由依ちゃんの服を脱がせてシャワールームに入れ、体を全部洗ってあげた。

僕も簡単に汗を流してふたりでベッドに寝そべった。

『剛さんは偉かったよ』
「何が?」
『柳井くんの前で、大人だった』

由依ちゃんにそう言われて、しっくり来ない自分がいた。
< 238 / 439 >

この作品をシェア

pagetop