孤独女と王子様
『営業局のエースなのに、勿体ないですね』
『由依ちゃんも他人事じゃないよ。剛は、将来ゴールドホテルグループの社長になる人間だ。ずっとわかば堂書店で働くわけにはいかなくなるよ』

ケン兄さん、あまり触れて欲しくない話をしているんだよな。僕はそのあたりの話はあえて避けているのに・・・

1年半、友達関係から踏み込めなかった最大の原因が僕の将来の問題だということを、さっき話したばっかりじゃないか。

「ちょっと、ケン兄さん、その話はやめてよ」

僕は話題を変えたいと思った。
けど・・・

『私は、わかば堂書店でずっと働くつもりはありませんから』

由依ちゃんが意外なことを言った。

『剛さんがどんな家柄の人間であろうとも、ふたりで同じ方向を見て、同じ道を同じスピードで歩いて行く。これに勝る大事なことはありません。もしそうなるべき時が来たら、私は剛さんの横に立って、一緒に歩きたいんです。だからわかば堂書店で働いていたのではそれが出来ないと思いますし、中途半端になってしまうので、剛さんの希望じゃなくて、私の希望としてそうしたいんです』
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