孤独女と王子様
"成瀬川さん、大丈夫ですか?"と何度も聞かれてしまう始末だった。

由依ちゃんにはあんな言い方をしてしまったことで、僕の心は浮ついていたのかも知れない。

夕方。
洋食居酒屋での送別会。

プランナーの女性が寿退職をする。

プランナーと主婦の両立は困難と、自らが決断したらしい。

宴が1時間ほど過ぎた夜7時半ごろ。
僕の携帯が鳴った。

どうせ友達だろうと思って念のためディスプレイを見ると"良美さん"の名前。

折り畳みの携帯を広げると、数件の着信。
その全部が良美さんだった。

良美さんはケン兄さんのお母さんで、業界では有名なフローリスト。

たまに仕事で連絡は取り合うけど、この時間に何回もかかってくるのはかなりレアケース。

一旦貸し切りの個室を出て、良美さんにかけ直した。

「もしもし、剛です」
"あ、やっと繋がった。"

良美さんとはメールアドレスの交換はしていなかった。
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