孤独女と王子様
10時半。
新郎新婦控室へ向かう僕。

まずは自己紹介。

「本日、お2人の門出のお手伝いをさせていただきます"セガワ"と申します。よろしくお願いいたします」

着席している2人に目線を合わせて挨拶をする。

そして本名は名乗らない。
名札も特別に用意してもらっている。

当初は、ちゃんと本名を名乗っていた。

ところが、新郎新婦から"成瀬川家の御曹司ですよね"と言われてしまい、キャプテンという立場は黒子にならなければならないはずが、その披露宴が僕の話題で持ち切りになってしまった。

そこで、社長にお願いして、名札と名乗りを変えることにしたんだ。

基本的にキャプテンは名刺を使わない。

タキシードにドレス姿の新郎新婦に名刺を差し出したところで、彼らはそれをどこにしまうのか困ってしまうからだ。
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