孤独女と王子様
それでも社員なので一応名刺はあるし、それは本名のものなんだけど、殆ど引き出しの肥やし。
数枚だけ財布に入れて持ち歩いているけど、誰かにあげたことは、ない。

この間、神戸さんにあげたのが、最初で最後かも知れない。

怒涛の土日を、3組の門出を見届け終えた日曜日の夜。

仕事が終わって、ホテルの従業員用出入口から外に出た。
すると、目の前の歩道に女性が佇んでいた。

すぐに誰だか分かる。

「神戸、さん?」

僕がそう声を掛けると、神戸さんはお辞儀をした。

『あの、ちょっと、私の酔い醒ましに付き合っていただけませんか?』

神戸さん、飲みに行ってたのか。

でも今は日曜日の午後8時。
随分早く飲み終えてるんだなぁ。

休みだったのかな?

当然、僕は全く迷いなく"いいですよ。お付き合いします"と答えた。
すぐ近くに公園があり、そのベンチに座った。
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