孤独女と王子様
『次からは、ハイカットのシューズの方がいいよ』

山を登る途中の会話から、剛さんから敬語が抜けていた。

でも気にしない。
友達に敬語ってあり得ない。

ましてや剛さんは私の3つ年上だし。

剛さんは私の左足首のくるぶしを中心に湿布を貼り、丁寧にテーピングを巻いてくれた。

『歩ける?』
「大丈夫です」

本当は痛いけど、こんな山の中で"歩けない"なんて言えない。

『でも、歩かせないよ』

そう言うと、剛さんは自分のリュックを前に担ぎ、私に背中を向けた。
・・・おんぶってこと?

「いやいや、無理ですよ!重いですよ!」
『ダメ。山の下りはそうじゃなくても足の負担が大きいのに、捻った足に体重をかけると、治りが遅くなるよ』

と、言われて、止むなく剛さんの背中に体重を預けた。

しゃがんでいた剛さんは、私の体重があるのに軽々と立ち上がった。

「大丈夫ですか?」
『由依ちゃん、軽いね。ちゃんと食べてる?』
「剛さんこそ、すごく力があるんですね」
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