孤独女と王子様
「何だか、羨ましいです」
『何が?』

着替えが終わり、一旦持っていたボードを置いてゲストハウスの前で屈伸をしている私達の会話。

「私、きょうだいがいないので"オバさん"になることは生涯ありませんから』
『そんなの、分からないじゃん』

剛さんは私の言葉にすぐさま反応した。

『人はどういう縁になるかによっては生涯ない、ってことはないと思うよ。僕がこうやって由依ちゃんと一緒にスノボーやっているのだって、由依ちゃんを孤独にさせたくないからだし』
「私は、別に1人でも構わないんですけど」
『そんな寂しいことは言わないで。素直にさっきみたいに僕のことを"羨ましい"と感じていて欲しいな』

こうやって外に連れ出して貰えるのも、全部剛さんのおかげだ。

『さ、リフトに乗ろう。由依ちゃんは久しぶりだろうから、最初は低いゲレンデでやろう』

剛さんの言葉通り、最初は低いゲレンデから滑る。

体重移動に慣れず、転びはしないものの、なかなかスピードが出せない。
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