今宵も、月と踊る
先に仕掛けたのは私の方だったのに、いつの間にか主導権が握られている。
ああ、幸せ過ぎてこのまま死んでしまいたい。
このままずっとこうして一緒にいられたらいいのに。
“カグヤ”のことも“カグヤ憑き”のことも忘れて、ただの女として愛されたい。
温もりを直に感じようと志信くんの胸に這わせた手を慌てて離す。
(だめ……)
これ以上、進んでしまったら自分の気持ちを抑えられなくなりそうだ。
我を忘れてみっともなく追いすがって、拒絶されたらと思うと怖くなる。
志信くんはそんな私の反応を怯えと捉えたのか、ことさら優しく肩を抱いた。
「……無理強いはしたくない」
熱い吐息を多く含んだ言葉には微かに欲望が滲んでいた。極上のクラシックのような重厚な調べが耳に心地よい。
「心の準備が出来るまで待つから」
約束の証のように頬にキスを落とされると、頭の芯が痺れて何も考えられなくなった。
……志信くんに必要とされている。
それだけで夜明け前に訪れるまどろみの中にいるような、夢見心地の気分になれる。
(ねえ、少しだけ期待してもいいかな……)
「志信くん、お願いがあるの……」
「何だ?」
「私にも舞い方を教えてくれる?」