今宵も、月と踊る
「この着物だけで十分よ。贅沢を望まなければ大抵の物は自分のお給料で買えるし……」
前々から思っていたが、小夜は欲がなさすぎる。
独立心が強いのは大いに結構だが、男としては甘えられるのだって悪い気はしないのに。
「他に望みはないのか?」
どんなに小さなことだっていい。心の片隅に俺という存在を植え込みたかった。
「じゃあ……もう一回綺麗って言ってくれる?」
極上の微笑みと共に告げられた可愛いらしいおねだりに、目をしばたたかせる。
ああ、もう……小夜には敵わない。
「何度でも言ってやるよ」
頼まれなくたって何度でも言ってやる。似つかわしくない愛の台詞だっていくらだって吐いてやる。
もしかしたら、溺れているのは俺の方なのかもしれない。