今宵も、月と踊る
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「珍しいですね、志信さんが女性物の雑誌を読まれるなんて」
……面倒な奴に見つかった。
講義の合間の昼下がり、ラウンジで雑誌を読んでいると、どこからともなく現れた正宗はタイトルを見るなり大袈裟に驚いてみせた。
何を言ったところでからかわれるだけだろうと思い、口を噤んでページをめくる。
大学内の書店で適当に選んだ女性ファッション誌には、流行の服や人気の食べ物が書かれていても小夜の欲しがりそうな物の情報はなかった。
諦めてファッション誌を閉じると、テーブルを挟んで反対側の椅子に座った正宗の前に放り投げる。
「やる」
「お目当ての物は見つかりましたか?」
「さあな」
どうせ最初から期待していなかった。小夜が世間一般の女性の枠組みに入るようなら、これほど悩んだりしない。
……一体、小夜は何を求めているんだ?
高価なプレゼントにつられる簡単な女じゃない。誰かを貶めて嘲笑うような卑劣な女でもない。
縁側に腰掛けてひたすら俺の帰りを待っている女に何をしてやれるだろう。
差し出す対価は大きければ大きいほど良い。相手の望んでいる物なら尚更だ。
(とびきり素晴らしい物をやろう)
……俺から離れては生きていけないほどの喜びを与えてやろう。
それは、小夜を縛りつけるための新たな足枷となる。