今宵も、月と踊る
俺は部屋から毛布を持ってくると、小夜の隣に座り肩を引き寄せて、己の体温を分かち合うように一緒に包まった。
薄手のセーターしか身に着けていない小夜の身体は夜風に晒されてすっかり冷え切っている。
いつから縁側に座っていたのだろう。
「何かあったんだろう?」
「何でもないよ」
「嘘つけ。ほら、隠したものを見せてみろ」
うぐっと言葉を詰まらせる小夜に向かって掌を見せながらよこせと言うと、おずおずと茶封筒を渡される。奪い取った勢いそのままに中身を引き抜く。
「大学の後輩がわざわざ送ってくれたの」
……それは、陸上競技の専門誌だった。最新号らしき冊子には、ご丁寧に付箋が貼ってある。
この手の雑誌は現役を退いて久しい小夜には縁がないはずだ。大学の後輩とやらは何を考えているんだ?
「悪口でも書かれていたのか?」
「ううん、違うの。むしろ逆かな」
雑誌を送ってこられて困惑しているのは小夜も同じのようだ。
「志信くんも読んでみる?」
促されるままに付箋の貼ってあるページを開く。
見開き4ページに渡って掲載されていたのは、国際大会出場が決まったある選手のインタビュー記事だった。