今宵も、月と踊る

「彼女と私は大学の同期だったの」

小夜は膝を抱えながら答えると、ポツリポツリと思い出を語り出した。

「中学、高校と全国大会ではずっと優勝を争ってきたんだけど、大学生になって同じチームに所属するようになってからは、周りからもよく比較されたわ。そのせいか私達も互いによそよそしくてね……。ふたりともまだ若かったのよ」

かつて夢中で陸上に打ち込んだ日々を愛おしげに懐かしんでいる小夜の穏やかな横顔に俺は見惚れていた。

小夜にとって陸上とは辛い経験を示すものばかりではなかったのだ。その証拠に先ほどから送られてきた雑誌の表紙を丁寧に撫でている。

「ずっと、疎まれていると思っていたわ。練習中は目も合わせてくれなかったもの」

「違ったのか?」

小夜はにんまりと口元に笑みを浮かべながら頷いた。

「私が怪我をして引退するって決めた時に最後まで引き留めたのは他ならぬ彼女だった。不思議よね。目障りな私がいなくなれば清々するでしょうに……」

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