恋宿~イケメン支配人に恋して~
……ていうか、そもそも千冬さんはなんでキスしたんだろう。
好き?いやいや、それは自惚れすぎでしょ。
冗談?でもそういうからかい方する人じゃないと思う。
酔った勢い、とか?……それは一番ありえるかも。
でもあの表情を思い出すと、勢いや冗談ではなくて、本気であってほしいと願う自分がいる。
……なーんて、ね。
呆れたようにはぁ、と息をひとつ吐き出せば、ほんのりと昨日のお酒の匂いがした。
まずい、昨日の匂いがまだ残っている。確か一階の売店に口臭ケアのガムとかがあったはず……。一応買っておこうかな。
私はとりあえず着替え、顔を洗うと一階の売店へと向かった。
まだ売店の人もいないかもしれないけど……メモ書きとお金置いておけばいいか。
そう考えながら、歩く廊下。皆は一度家に帰ったのだろうか。どこからも音も人の気配もしない。
そんな中1階についたところでコツ、と聞こえた足音。
誰かいる……?
足を止め振り返ると、そこにはこちらへ向かい歩いてきた千冬さんの姿。
紺色のスーツにネクタイをしっかりと締めた、早くも完璧な格好をした彼は、ちらりとこちらを見ると素っ気なく目をそらす。
「……おはよう、ございます」
「……あぁ、おはよう」
予想はしていたけれど、どこか気まずい。
言葉に表さなくても、その原因が昨日のキスであることは明らかだ。
「……、」
「……あ、あの」
挨拶だけで歩き出そうとしてしまう彼に、慌てて呼び止める。