恋宿~イケメン支配人に恋して~
「そんなの、遊びに決まってるだろ」
「え……?」
けれど、返される言葉は残酷で、聞きたくなかった一言。
その言葉に、頭が真っ白になった。
「こういう所で長いこと働いてると出会いもないからな。よそから来る女が珍しいんだよ。……あぁ、もしかして、本気にしたか?」
彼はそう問いかけるように言うと、ふっと鼻で笑う。
「別に誰にだってする。おまえじゃなくたって、な」
遊び?
あぁ、よそ者だから。遊んでも後腐れがないから。
私だからしたわけじゃない。相手が私じゃなくたって、したんだ。ただの遊び。冗談。それだけ。
からかって満足したから、帰っていい?
そっか
そっか、
「……そう、ですか」
震える声で絞り出した一言。それと同時に、ぽたっと床に水滴がひとつ落ちた。
大声で泣いてしまいそうな自分を抑えるように唇を噛んでこらえた。けど、涙はこらえきれずこぼれてしまう。
「理子……?」
「っ……」
ぼろぼろと涙をこぼす私に、千冬さんは驚き、手を伸ばす。けれど触れてほしくなくて、私はその手を払い彼と距離を取った。
「……私だって、酔ってたからしただけです。相手が千冬さんじゃなくたって、誰とだってします。……そっちこそ、本気にしないでください」
そして体の向きを変えると、来た方向へと歩き出す。
「……お世話に、なりました」
全て強がりだと丸わかりの、震える声で呟いて。