恋宿~イケメン支配人に恋して~
「理子ちゃん」
旅館を出た先のバス停でバスを待っていると、不意に呼ばれた名前。
振り向くとそこにいたのは、パーカーにデニムという私服姿の八木さん。いつもきっちりまとめている髪も、クリップで簡単にとめているだけ。
「八木さん。そういえば今日休みでしたっけ」
「うん。昨日確か15時まで街のほう見るって言ってたじゃない?よかったら私も付き合ってもいい?」
「えっ、いいんですか」
「うん、とっておきの場所連れて行ってあげる」
そのために、休みの日にこうして会いに来てくれたのだろう。本当に面倒見がいいというか、優しいというか……。
「……八木さんって、長女ですか」
「へ?うん、よく知ってるね。下に妹と弟とさらに弟がいるの」
やっぱり……この面倒見の良さはそこからきているのだろう。
そう納得しながら、八木さんとふたりバスに乗り街のほうへと下っていく。
……街、行きたくないな。
千冬さんとふたりで歩いた、あの日を思い出してしまうから。