恋宿~イケメン支配人に恋して~
「あ、あらやだ!彼氏連れてくるとは聞いてたけど、こんなかっこいい人連れてくるならそうって言ってよ!もう!ごめんなさいねぇ、お恥ずかしい」
「いえ、突然すみません」
若くてかっこいい男、という見た目に、たちまち外面用の猫撫で声になる母に、千冬さんは落ち着いた様子でこれまた外面用の笑顔でにこりと笑う。
千冬さん……意外と普通だなぁ。
私が相手の両親に会うとなれば、絶対緊張してしまう。けどそれも何のその、普通に笑顔を見せられるあたりが千冬さんらしいというか……。
「お母さん。お父さんは」
「リビングに居るわよ。さ、どうぞあがって」
「はい、お邪魔します」
先に靴を脱いであがる私に、彼も続いて靴を脱ぎ家にあがる。
細い廊下の奥、先程母が出てきた白いドアを開けると、そこには家族3人で暮らすには充分な広さのリビングとダイニング、そしてキッチンが広がっている。
リビングの壁際にある、ベージュ色の大きなソファを見れば、そこにはメガネをかけ新聞を読んでいる痩せた中年……私の父がいた。
「お父さん。ただいま」
「……あぁ」
無口で無愛想な父の、相変わらずの短い返事。それを聞くたび私はやっぱり父親似だと実感する。
「どうぞ座って、お茶入れるわね」
「すみません、お構いなく。これ、つまらないものですが」
「あらあら、わざわざすみませんねぇ!」
さっきの剣幕は一体どこへ行ったのか。
千冬さんににこにこと笑顔を向ける母に、目の前の父も呆れた眼差しを向けた。