恋宿~イケメン支配人に恋して~
「なに、誰?」
「え?いや、あの……」
「ちょっと誰、困るよこういうのー。人の家勝手に入るなって教わらなかった?はい、帰って帰って」
しっしっと手で払うその人に、一度は怯んで外のプレートを再度見直す。
そこにはやはり間違いなく『205・芦屋』の文字。
千冬さんの部屋で間違いないはず。ポストを見たときに他に芦屋なんて名前の人もいなかったし。
でも……この人は誰?
「あの、ここって芦屋千冬さんの家じゃないんですか」
「ん?そうだけど?あ、なに千冬に用?」
「用というか、なんというか……」
千冬さんの家と認めながらも我が物顔でいる彼にどう言うべきか迷っていると、彼はふと気付いたように問う。
「……もしかして、最近出来たっていう彼女?」
「……まぁ、はい」
すると途端に、その顔は眉間にシワを寄せ怪訝な表情を見せた。
「はぁ!?こんな地味な女が!?前から思ってたけど千冬って趣味悪くない!?」
「は!?」
いきなりなんて失礼なことを!
見ず知らずの人にそんな言われ方をする意味が分からず、ついこちらも怪訝な顔になる。
ところがそんな私に、彼はなにを思ったのか背後の壁にドンッ!と手をついた。
これは、俗に言う壁ドンというやつ……!?
女子に人気なシチュエーションと聞いたことがある。けど、目の前のその顔は見下すようなゴミを見るような目をしていて、知らない人にこんな距離で追い込まれるという状況に恐怖感しか感じられない。
「で?どうやって千冬につけこんだわけ?体?体でたぶらかした?」
「へ!?たぶらかす!?」
「いや、でもたぶらかそうにも胸がないか……可哀想なほど色気もない」
「はぁ!?」
また失礼なこと言った!!
な、なんなのこの人……ムカつく!腹立つ!
憐れむように溜息をつくその人を睨んでいると、ガチャ、と開けられた玄関のドア。