恋宿~イケメン支配人に恋して~
「で?千冬、本っっ当にこれが新しい彼女なわけ?」
「あぁ。理子だ、今うちの仲居として働いてる」
「……吉村、理子です」
先程の不愉快な気持ちが拭いきれず、無愛想に挨拶をする私に、その顔はますます嫌そうに歪む。
「理子、こっちは小川宗馬。俺の幼馴染の花屋」
幼馴染?でもって、花屋?
初めて聞くその存在に、キョトンと首を傾げてしまう。
「うちの旅館に飾ってある花があるだろ」
「あぁ、廊下や部屋に飾ってあるやつですか。あれ綺麗ですよね」
「そう。それ運んできて生けてるのが、こいつ」
「……そう聞くと一気に花が綺麗に見えなくなりました」
「おいコラクソガキ」
旅館の廊下や部屋など至るところに飾られている、綺麗な花。誰がやっているのだろうとは思っていたけれど……まさか、こんなチャラチャラとした、嫌味な男がやっていたなんて。
「その幼馴染がどうして千冬さんの部屋にいるんですか」
「俺ほとんど旅館で家空けること多いだろ。だから、普段実家住みのこいつに好きに使わせる代わりに家の管理を任せてるってわけだ」
「へー……」
「でも今日は『実家帰ってろ』ってメールしておいたはずなんだけどなぁ」
ジロ、と睨む千冬さんにその人……宗馬さんは思い出したように携帯を確認して『やべ』といった顔をする。
メール、今気付いたんだな……。
「ってわけで、帰れ」
「嫌だー!帰りたくないー!今日妹が家に彼氏連れて来てるせいで皆して『宗馬はまだ彼女の一人も連れてこないのか』って言うから逃げてきたんだよー!」
聞きたくない!とでもいうように耳を塞ぐ彼に、千冬さんは慣れた様子でコーヒーを飲みふうと息を吐く。
「……彼女、いないんですか」
「なに、意外だった?」
「いや、思った通りです。口悪いですもんね」
先程から好き放題言われていることもあり、反撃するように言えばその顔はカチンと眉間にシワを寄せる。