ミントグリーン~糖度0の初恋~
「ん……。よしよし。
ここには兄貴たちと一緒に来ればいいから。
とりあえず今日は…自分の部屋に帰るんだよな?」
コクンと頷く私の頭をシンタくんはもう一度撫でてくれた。
「じゃあ、俺が駅まで送るから。
今たまってるオーダーだけ片付けてくるからそれまでそこに座って待ってて」
部屋の隅に置かれたソラマメ色のソファーを顎で示すシンタくんに、私は慌てて首を振る。
「いいよ、大丈夫。
駅まで遠くないんだし、1人で帰れるよ」
私の住む女性専用マンションは大学のそばで、川越から電車で40分くらいのところにある。
この店から川越駅までは徒歩5分くらい。
1人で来て、1人で帰る。
さすがにそれくらいのことは出来る。
だけど、シンタくんはきっぱりと首を振った。
「ダメ。ここは路地裏だから暗いし、またナンパでもされたらどうすんの?
千波、これからこっちで生活するんだからもう少し危機感持てよ?
とにかく、そこにおすわり」
「おすわり、って…。
犬じゃないんだからさ…」
文句をいいながらも、私はソファーに腰をおろした。