モラトリアム
昼食をまともに食べられなかった私は、空腹と戦いながら何とか仕事を終わらせた。
同僚との話もそこそこに更衣室を出てロビーに出ると、またそこには会いたくないヤツの姿が。
「はぁ…。ストーカーなわけ?」
「失礼ですねぇ」
西園は笑いながら私に着いてくる。無視して帰ろうとしたら、腕を掴まれ駅とは反対方向に連れて行かれた。
「ちょっ、なにするのよ」
「いいから、こっち」
華奢な割にその手は力強くて男なんだと思い知る。たどり着いた先は一軒の居酒屋。
「ほら、好きなの頼んで」
メニューが私の前に差し出された。
それを無視して帰る事も出来たがそれをしなかったのは、あまりの空腹のせいなのか、西園の笑顔が可愛く見えてしまったからなのかはよく分からない。