リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【後編】
「牧野の話しかねえだろうがよ。他になんの話があるって言うんだ、お前さんに」
「それは、そうなんですけどぉ」
「多分、母親のこととか、そういう話じゃねえのか」
母親と言われ、明子の表情は知らず険しくなった。
「牧野さんに内緒で、聞いてもしまってもいいんでしょうか?」
「それは、お嬢さんの覚悟次第だろ。あいつの隣に並ぶ覚悟が、あるかどうかだよ」
できることなら聞きたくないという態で表情を硬くする明子に、しかし、小林は容赦なくそう言い放った。
「本気で、あいつとの結婚を考えているなら、あいつの母親のことは、ちゃんと知っておいたほうがいいと思うけどな、俺は」
「牧野さんから、あるていどのことは」
「それが全てとは限らねえだろ」
聞いていますと、そう続くはずだった言葉を遮られた明子は、小林にしては珍しい、やや物憂げな思案顔を凝視した。
「牧野が隠してるってわけじゃなくてな。牧野が知らないことが、あるのかもしれないだろ。あいつが母親と別れたのは、六つか七つか、そんなころのことだろ。小さな子どものころの断片的な記憶だ。あんがい、牧野の今の両親のほうが、あいつの母親については知っているんじゃねえのかなって思うんだよ。亮一がそれを話したいって言うなら、聞いてやってもいいんじゃねえのか」
牧野のためにも。
淡々と続けられたその言葉を、小林を見つめたまま静かに聞いていた明子は、やがて何かを決心したように唇を引き締めた。
「いつ、ですか?」
「駅前の韓国料理屋って、判るか?」
「え、ええ」
「そこで、今夜、飯でも食いながらどうですかって。都合悪いなら、日を改めるとさ
」
どうすると携帯電話を取り出しながら答えを質す小林に、明子は瞬き一回分ほどの間をおいてから、「判りました」と大きく首を縦に振った。
「会いますと伝えたください」
「了解。まあ、人当たりはいいヤツだから、そう身構えねえで、未来の義弟と楽しく飯を食ってこいや」
からからと笑いながらの発言に、義弟と言われもピンとこないんだけどなあとぼやきつつ、明子はあることを思い出した。
「それは、そうなんですけどぉ」
「多分、母親のこととか、そういう話じゃねえのか」
母親と言われ、明子の表情は知らず険しくなった。
「牧野さんに内緒で、聞いてもしまってもいいんでしょうか?」
「それは、お嬢さんの覚悟次第だろ。あいつの隣に並ぶ覚悟が、あるかどうかだよ」
できることなら聞きたくないという態で表情を硬くする明子に、しかし、小林は容赦なくそう言い放った。
「本気で、あいつとの結婚を考えているなら、あいつの母親のことは、ちゃんと知っておいたほうがいいと思うけどな、俺は」
「牧野さんから、あるていどのことは」
「それが全てとは限らねえだろ」
聞いていますと、そう続くはずだった言葉を遮られた明子は、小林にしては珍しい、やや物憂げな思案顔を凝視した。
「牧野が隠してるってわけじゃなくてな。牧野が知らないことが、あるのかもしれないだろ。あいつが母親と別れたのは、六つか七つか、そんなころのことだろ。小さな子どものころの断片的な記憶だ。あんがい、牧野の今の両親のほうが、あいつの母親については知っているんじゃねえのかなって思うんだよ。亮一がそれを話したいって言うなら、聞いてやってもいいんじゃねえのか」
牧野のためにも。
淡々と続けられたその言葉を、小林を見つめたまま静かに聞いていた明子は、やがて何かを決心したように唇を引き締めた。
「いつ、ですか?」
「駅前の韓国料理屋って、判るか?」
「え、ええ」
「そこで、今夜、飯でも食いながらどうですかって。都合悪いなら、日を改めるとさ
」
どうすると携帯電話を取り出しながら答えを質す小林に、明子は瞬き一回分ほどの間をおいてから、「判りました」と大きく首を縦に振った。
「会いますと伝えたください」
「了解。まあ、人当たりはいいヤツだから、そう身構えねえで、未来の義弟と楽しく飯を食ってこいや」
からからと笑いながらの発言に、義弟と言われもピンとこないんだけどなあとぼやきつつ、明子はあることを思い出した。