リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【後編】
「会ってどう思った、亮一」
「え?」
「会ったんだろ? どう思った?」
「どうって……そうですねえ、しっかりしていて、……牧野さんのことをよく判っているなあって」

亮一から受けた印象を伝えられる的確な言葉が思い浮かばず、明子は首をかしげながら考え込む。
しかし、その言葉で明子の言わんとしていることが君島には伝わったらしい。それに相応しい言葉を、さらりと明子に告げた。

「あいつのほうが、牧野の兄貴っていうか、保護者みたいだったろ?」

牧野の兄貴と言うその表現に、ああ、なるほどと、明子は大きく頷いた。
牧野を背に庇い、牧野を追いつめていたあの男との間に割って入った亮一の後ろ姿は、まさに君島の言う通りだと明子は思った。

「なんかな、牧野のほうが兄貴のはずなんだがな、亮一のほうが兄貴っぽいんだよ、あの兄弟は」
「背格好も似てるしな。知らないであいつらの様子を眺めてたら、絶対、亮一のほうが兄貴に見えるよな」
「まあ、牧野本人もそう言ってるしな。表向きは自分が兄貴で亮一弟だけど、実態はあっちが兄貴って」
「開き直りやがって、あのやろう。あいつのはただの甘えただろうが」
「ははは。デカい図体のくせに、仔犬の柴犬みたいになるらしいからな、実家だと」
「つーか。アレは犬っていうよりよ、猫じゃねえか、性格」

ツンツンデレデレで。
君島と小林のやり取りを黙って聞いていた明子は、そう続けられた小林の言葉にたまらず吹き出し笑った。

「ネ、ネコ……実はネコ、……ツンツンデレデレのネコっ」

しわしわの声で笑い転げる明子に、「小杉、だんだん声が酷くなってきてるぞ」と君島は苦笑を浮かべながら、机の引き出しから取り出した湯呑を持って立ち上がった。

「こっちの喉までイガイガしてきそうだから、茶でも淹れてくるよ」

とりあえず、魔女の毒薬を舐めてみろ。
飴を握りしめたままの明子をそう促して、君島は部屋を後にする。
明子は君島の言葉に「はーい」と間の抜けた返事を返して、飴を一つ、口の中に放り込んだ。

「ホントに辛そうだな、その喉。休んでいいぞ?」
「あー。声はこの有様なんですけど、それ以外はなんともなくて」

丈夫すぎる自分の体にがっかりです。
小林の心配におどけた口調でそう答える明子に、小林はやや改まった声で話しかけた。
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