カメラマンと山小屋はよく似合う
痛いくらい冷たい外気に、熱くなっていた頬が丁度良く冷まされていく。裸足で雪を踏むなんて、人生で初めての経験だった。昨夜履いていたパンプスもストッキングも、来る時に雪で濡れて、もう一度履く気にはならなかった。高東さんに靴を借りようとしたけれど、彼曰く『イメージが崩れる』との事で。

それでもこの頼みを受け入れたのは、至極当然の事だった。それはおばあちゃんを探すのを手伝ってくれたお礼だとか、昨夜泣き縋った負い目なんかなどではなくて、ただ、こうなる事が始めから決まっていたかのような。

何故、と自身に問う必要もないほどに、川の流れが河口へ向かうのと、雪が温かい日差しに溶けてしまうのと同じこと。

高東さんと私は、大切な人を亡くした悲しみを共有する、同志なのかもしれない。

広いバルコニーの真ん中まで進んで、左を向いた。葉の落ちた木々が整然と並ぶ斜面の下、おばあちゃん家が小さく見える。視界が滲んで、枯れることを知らない涙に瞬きすれば、山道を登ってくるおばあちゃんの姿が見えた。

ゆっくりとゆっくりと、何かを懐かしむように、山と戯れるように大地を踏みしめ、そして不意にこちらを見る。

「ああ、つーちゃん。やっぱりここにいたんだねぇ」

「おばあ、ちゃん……?」

「ここは人様の家だから、勝手に遊んでは駄目だって言ったでしょう? 本当に、仕方のない子だねぇ」

「おばあちゃん」

「今日はつーちゃんの好きな筑前煮を作ったからね。一緒にお家に帰ろうね」

「っ、おばあちゃん、あのね、私ね、」

「おやおや、どうしたんだい? おばあちゃんに何でも言ってごらん」

「〜〜おばあちゃん!」

差し伸べられた手を掴むために伸ばした自身の手は、おばあちゃんに触れることなく宙を切った。
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