カメラマンと山小屋はよく似合う

− 思わぬ人 −

「うわ、高東さん何これすごい!」

「何って、普通に朝飯だろ」

「朝めしっていうか……ブレックファースト?」

「がちがちのカタカナ英語だな」

おばあちゃん家に戻りお風呂に入ってきた私を待っていたのは、所謂ワンプレート朝食ってやつで。スクランブルエッグとベーコンと、サラダとクロワッサンが二つ。それから別々の小皿に分けられたわかめスープとヨーグルト。それら全てが、白くて四角い大きなお皿にまとめられていた。

「つーか山小屋とロッジの件もそうだけど、何でも英語にしたがるよな、あんた」

「えー。そういうつもりはないんですけど、やっぱりどっちがピンとくるかって問題じゃないですか?」

「あっそ」

「ちょっと! 自分から聞いておいて流すのやめてくださいよ!」

「分かった分かった。で、コーヒーに砂糖とミルクは?」

「……一つずつでお願いします」

「あいよ」

この人、だんだん私の扱いが上手くなってきたなと自分で思う。高東さんが二人分のマグカップを置いて席に座ったのを確認して、両手を合わせた。

「いただきます」

「はいドーゾ」

ぱくり。フォークで一掬い口に含んだスクランブルエッグは、

「……美味しい。けど、普通?」

「だろうな。味付けは塩コショウだけだから」

「こ、この見た目で……」

決して非難しているわけではないのだけど、隠し味とか入っているのかと思っていたから軽く拍子抜けで。それは彼も分かっているのだろう。黙々とサラダを胃袋に収めながら口を開く。

「まあ、見た目にこだわっちまうのは職業柄だ」

「食べ物も撮ったりするんですか?」

「雑誌の弁当特集なんかも撮るし、そもそも売れるまでは基本的に何でも撮るな」

「なるほど」
< 19 / 25 >

この作品をシェア

pagetop