カメラマンと山小屋はよく似合う
「どわっ」
ずるずると滑る足元に、咄嗟に横の木に手をついた。その拍子に揺れた木の枝から落ちてきた雪の塊に、きゅっと肩を竦めて飛び退いた。
祖母の家を出て正面にある砂利道とは違い、右手にある裏山に続く細道は日が殆ど当たらない。そのせいで昼間でも中途半端にしか溶けない雪は、私の想像よりもずっと、
「滑るじゃないか、このやろう」
夏にしか行かせてもらえなかった理由がいま分かった。やっぱりゴム製の長靴が正解だったかと一人ごちる。
普通なら5分くらいで登り切れる坂だというのに、足元が悪いせいでなかなか上手く進めない。こういうちょっと嫌な事が積み重なると、思い出すのは現実世界の事だった。もちろん今この瞬間も紛れもない現実だけど、そうではなくて、私が今まで過ごしてきた日常の話だ。
「仕事、探さなきゃな」
誰に言うでもなく、小さく呟く。言葉にして発散しないと、ずるずると重く暗い所に引きずり込まれてしまいそうだったから。
去年の十二月。私は仕事納めの日を最後に、情けない事にたった一年で会社を辞めた。
ずるずると滑る足元に、咄嗟に横の木に手をついた。その拍子に揺れた木の枝から落ちてきた雪の塊に、きゅっと肩を竦めて飛び退いた。
祖母の家を出て正面にある砂利道とは違い、右手にある裏山に続く細道は日が殆ど当たらない。そのせいで昼間でも中途半端にしか溶けない雪は、私の想像よりもずっと、
「滑るじゃないか、このやろう」
夏にしか行かせてもらえなかった理由がいま分かった。やっぱりゴム製の長靴が正解だったかと一人ごちる。
普通なら5分くらいで登り切れる坂だというのに、足元が悪いせいでなかなか上手く進めない。こういうちょっと嫌な事が積み重なると、思い出すのは現実世界の事だった。もちろん今この瞬間も紛れもない現実だけど、そうではなくて、私が今まで過ごしてきた日常の話だ。
「仕事、探さなきゃな」
誰に言うでもなく、小さく呟く。言葉にして発散しないと、ずるずると重く暗い所に引きずり込まれてしまいそうだったから。
去年の十二月。私は仕事納めの日を最後に、情けない事にたった一年で会社を辞めた。