カメラマンと山小屋はよく似合う
一歩足を踏み出すたびに、ぐちょりとムートンが音を立てる。あの防水スプレーが安物だったからいけなかったのか、それとも雪道に足を突っ込み続けたせいなのか。理由はおそらく後者だけども、兎に角私の足はびちゃびちゃだった。
つま先がキンキンと痛く、凍傷になるのではないかと顔を歪める。
だけどそれでも私が何とか坂を登り切ったのは、この際だからロッジだけでも一目見たいと、最早意地のようなものだった。
人が人生の途中で躓いた時、今まで自分が歩んできた思い出の道のりに縋ってしまうのは一体どういう理由があるのだろう。そうする事で、今のこの状況から抜け出せる筈もないというのに。
息を切らして登った坂の右手、山を削って平面に整えられたそこに、日の光を浴びて佇むたった一つの小さなロッジ。座って休む事も出来ないまま、私はぼんやりとそれを見つめた。
昔遊んだ時よりも更に寂れたバルコニーは、所々に雑草が生え、落ち葉が溜まり、ただ純粋に時間の経過を私に教えた。
溶け切れなかった雪が僅かに残って、それが尚の事廃れて見せる。あの頃も既に長い間人は住んでいなかったのに、ここまで汚れてはいなかった。
もしかしたら、おばあちゃんがずっと掃除していたのかもしれないと、私は何となくそう思って。
つま先がキンキンと痛く、凍傷になるのではないかと顔を歪める。
だけどそれでも私が何とか坂を登り切ったのは、この際だからロッジだけでも一目見たいと、最早意地のようなものだった。
人が人生の途中で躓いた時、今まで自分が歩んできた思い出の道のりに縋ってしまうのは一体どういう理由があるのだろう。そうする事で、今のこの状況から抜け出せる筈もないというのに。
息を切らして登った坂の右手、山を削って平面に整えられたそこに、日の光を浴びて佇むたった一つの小さなロッジ。座って休む事も出来ないまま、私はぼんやりとそれを見つめた。
昔遊んだ時よりも更に寂れたバルコニーは、所々に雑草が生え、落ち葉が溜まり、ただ純粋に時間の経過を私に教えた。
溶け切れなかった雪が僅かに残って、それが尚の事廃れて見せる。あの頃も既に長い間人は住んでいなかったのに、ここまで汚れてはいなかった。
もしかしたら、おばあちゃんがずっと掃除していたのかもしれないと、私は何となくそう思って。