【完】矢野くん、ラブレターを受け取ってくれますか?
「それから拓磨は施設で暮らして、小5のときに矢野家に養子に入って俺と同じ小学校に転校してきたんだ」
多田くんは少し懐かしそうに上を向く。
「そのころの拓磨はさ、自分が施設に入った理由なんてまだ知らなくて。今よりも全然フレンドリーでよく笑って、みんなの人気者だった」
「あの、拓磨くんが……?」
フレンドリーでよく笑う子だったんだ……。
でも、どうして今は……。
「そう。でも、中1になったときに養子の親に自分が施設に入った理由を聞いたんだ。それからだよ、アイツが大荒れし始めたのは……」
多田くんは自分のことのように苦しそうに笑う。
「拓磨くんが不良になったのは、そういう理由だったんだ……」
「今はだいぶ落ち着いた方だけど、でも、中学のときはケンカを売りまくって、売られたら絶対に買ってた。イラついたら人に当たって、ものにも当たった。だって拓磨は……」
そこまで言うと、多田くんはまた私の目を真っ直ぐ見た。
「拓磨は……ずっと、母親が帰ってくるって信じてたから……」
「っ」
拓磨くんは信じていたお母さんに裏切られたのが相当ショックだったんだ。
でも、そんなの私が拓磨くんでも絶対そうだったと思う。
愛してくれるはずの親が自分を愛してなかった、なんて知ったら誰だって……。