『好き』と鳴くから首輪をちょうだい
馬鹿か、馬鹿ですというやり取りを数回繰り返したところで、眞人さんが諦めたように私の枕元に座った。


『こんなに面倒な奴だってわかってたら、飲ませなかった。寝付くまでここにいるから、早く寝ろ』

『そんなとこに座ってたら冷えるので、どうぞどうぞ』

『だからお前は馬……ああ、もう言っても無駄だな。ほら、寝ろ』


眞人さんがため息をついて、私の頭を乱暴に撫でた。


『髪も満足に乾かしてねえし。それくらいちゃんとしとけよ』

『えへへ、ごめんなさい。それよりほら、こっちに入って寝ましょう』


しつこく何度も繰り返す私に、とうとう彼は折れた。大きなため息を一つついた。


『寝るだけだからな』

『分かってますよう』


するりとシングルの布団に入り込み、『もうちょっとそっち行け』と言う。
そんな彼に私はぎゅっと抱きついた(思い返すだけで死にたくなった)。


『なんだ』

『こうして寝るの、好きなんれす。えへへー』


人の温もりに心地よくなる。
しかも、どうしてだか眞人さんの大きな体はとても抱きつきやすくてしっくりときた。
寄り添うだけで、途端に眠たくなってくる。
いや、アルコールのせいも大いにあったのかもしれないけれど。


『では、おやすみなさい』


そう呟いた、つもりだったけれど果たして言葉になっていただろうか。
多分私は、テレポーテーションでもしたんじゃないかと言うくらい早く、眠りの世界に落ちた。
眞人さんにしっかと抱きついたまま。

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