『好き』と鳴くから首輪をちょうだい
眞人さんのお土産に芋羊羹を一棹買って、私たちは帰路につくことにした。
私の手から老舗の和菓子屋の紙袋を取って、梅之介が言う。


「お土産って言っても、お前も食べるんだろ」

「勿論! ここの芋羊羹、すっごく美味しいんだよ。濃いめに淹れたお茶と合わせると、最強」

「結局、自分の為に買ったのかよ?」

「違うよ。眞人さんってああ見えて和菓子が好きなんだよ。特に、芋と栗を使った物が好きなんだ。お節の栗きんとんが大量にあったのは、眞人さんが大好きだからだよ」


鍋いっぱいの栗きんとんは、私と眞人さんの胃の中にあっという間に納まったのだった。私の正月太りは、あの絶品栗きんとんが原因の一つに違いないのだ。


「ケーキでも、モンブランなら食べてた」

「へえ、知らなかった。よく見てるな」

「ふふん、まあね」


梅之介が、ふっと私を見下ろす。


「ん? どうかした?」


梅之介が、ゆっくりと口を開いた。


「お前さ……、眞人のこと、好きになったんだろ」

「え」


思わず、足を止めた。梅之介も、足を止める。雑踏の中で、顔を見合わせる形になった。


「え、ええと、その」

「誤魔化すなよ、分かってるんだぞ」


梅之介の口調は、既に確信していた。


「眞人のこと、好きになったんだろ」


嘘をつくことも出来ないようだ。諦めて、こくんと頷いた。


「そ、そんなに私、あからさまだった?」


それから、おずおずと訊いた。
もしかしたら、私の気持ちは眞人さんにまで伝わってしまっているのだろうか。それは困る。
梅之介は「眞人は気付いてない」と言った。


「だけど、僕は分かったんだよ」

「そ、そか。よかった。眞人さんに気付かれたたら、私、どんな顔をして帰っていいのかわかんなくなっちゃう」


この気持ちがバレてはいけないものだってことは分かってる。
だから、絶対に想いを察知されまいと気を付けていたのだ。
梅之介に気付かれたのは想定外だったけど、まあ良しとしよう。


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