On Your Mark
「あと十キロほど東に入ろう。

あまりユーシチールの中に入り過ぎるのも危険だけど、このまま国境を辿っていくほうが危険を感じるからね」


イビルが羨ましい。



いつも冷静で、きっと頭の中は考え事が綺麗に整理されていて、僕のようにぐちゃぐちゃで混乱することなどないのだろう。


「了解だぜ」


レイが羨ましい。



いつも勇ましく、自分の考えをはっきりと言え、それを実際に行動できる力がある。

僕のように考えはあっても、それを行動に移せないもどかしさなど微塵もないのだろう。



「来たぜ。

東南に動きあり。

どうやらユーシチールが国境に手薄だったのは、領域に入ったら分かるような仕組みがあったようだ」


今はそんなことを言っていられない。
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