On Your Mark
時間は夜の七時になり、ようやくペスチニア軍の動きが止まった。

僕たちはそれから更に一時間ほどジープを北に走らせたところで、食事と睡眠を取ることにした。


「そろそろ燃料がやばいな」


貧相な食事と焚火を目の前にして、厳しい表情をレイは見せる。

一日中走っていたも同然の走行距離と、僕たちが持ってきた燃料を考えれば、明日の昼にでも尽きるのは目に見えている。


「そうは言っても・・・」


どうしようもない。

そんなに都合良く燃料など転がっていないし、移動用のジープだって置き去りになどされているはずがない。



ソラは僕たち三人の表情にどこか焦っているようで、順番に素早くそれぞれのほうに向けた。

何度目か僕のところに顔が向いたとき、なるべく優しく表情を作るとソラは安心したように表情が和らぎ、顔を動かすのを止めた。


「とりあえず、行けるとこまではこいつで行こうよ」


いつものようにイビルの優しい声が僕たちを包み、この悩みは場を流れることになる。



僕たちは分かっている。



ジープが止まってしまえば、歩くしかない。



歩いてでも行かなければいけない、と。
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