心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「…ありがとう」

あまりにスムーズな展開に、俺は逆に照れてしまった。

片桐は俺を見つめながら、

「ところで…線はどっちなの?あたしは八瀬方面だけど…」

定期を通した。

「お、俺は…」

ここで、定期を通そうとして…動きが止まった。



定期が切れていたのだ。


明日買う予定で、

今日は自転車で、時間をかけてきたことに…。


改札の向こうで待つ片桐に、

俺は情けない顔を向けた。

別に自転車を置いて、電車で帰ってもいいのだけど…、

今日は、持ち合わせもなかったのだ。

ほぼ無一文の俺は、頭をかきながら、

片桐に顔を向け、

「ご、ごめん…。いっしょに帰るのは、明日で」
< 47 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop