婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
初めて踏み入れる、葛城の部屋はコロニアル調のお屋敷とはうって変わり、モノトーンのシンプルな色合いな部屋だった。

白い大きめのデスクにはノートパソコンが2台置かれていて、その隣に備え付けられた同じく白い本棚には、ぎっしり本が並んでいる。

窓辺には青々と繁るクワズイモが置かれて、その脇にはクウィーンサイズの大きなベッドが置かれている。

葛城が愛用しているコロンが仄かに香る。テリトリーに足を踏み入れたと嫌でも意識してしまい、俄かに胸が高鳴る。

「どうぞ、掛けて」

言われるがまま、黒い革張りのソファーに腰を下ろした。

「家族以外の人を部屋に入れた事がないから、少し照れ臭いね」

葛城は私の隣に腰を下ろした。

「女子は私が始めて?」

「小学生の時以来かな」

轟さんが用意してくれたティーセットで紅茶を淹れてくれる。

どうぞ、と言ってティーカップを私の前に差し出した。

「あの、話しってなあに?」

二人きりで少し気まずくなったので話しを切りだした。

「来月は僕の誕生日なんだ」

「知ってる。10月10日でしょ」私の葛城リストにはきちんと記されている。

「ちょっとしたお披露目も兼ねて、お祝いの会を開くから遥も出席してくれるかい?」

「でも一緒に出席するのは私でいいの?」

フト絵梨の姿が頭を過った。

「当然だろ。婚約者なんだから」

葛城は例の絶対的な笑みを浮かべる。この微笑みを向けられると有無を言わさず「ああ、そうか」と納得してしまいコックリ頷く。

でもなんだろう、この事務的な切り返し。

そもそも『二人でお祝』という選択肢は鼻から葛城の頭にはないみたい。

…別に気にしてないけどね。
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