婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
翌日

硬いフローリングの床の上で目が覚める。

ゆっくり身体を起こすとズキリと腰が痛んだ。昨日は泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。

あと数m先のベッドで眠らなかった事を後悔する。

窓辺に置かれた電波時計を見ると8:30になっていた。

今日は一限から講義があったことを思い出す。

完全に寝坊じゃない。

いらただしげに、ぐしゃっと髪をかき上げる。

舌打ちをして立ち上がると、クローゼットから適当な着替えを掴みとって慌ててバスルームへ向かった。

シャワーを浴びて、人前に出ても不快に思われないギリギリのラインで身だしなみを整える。

階段を駆けおりて行きキッチンにいるママに「いってきます」と声を掛けた。

「遥!ご飯は?」ママがキッチンから尋ねる。「いらない!」と返事をすると、スリッポンをつっかけながら玄関を出て行く。

私がどんなに傷ついて涙に暮れても太陽はいつの間にか東から登り、時間は規則正しく流れていく。

大学の最寄りの駅に電車が到着し、駅の改札を出るとダッシュで向かう。

授業開始10分を過ぎていたけど、何とか授業に遅れを取らない程度の遅刻で済みそうだ。

キャンパスに到着した時は既に息が上がっていたがそれでも私は走り続ける。

教室へ向かう途中、背後から「遥!」と声を掛けられた。

反射的に振り向いた瞬間私は顔を顰める。

っげ…

そこには当分顔も見たくない葛城の姿があった。

私は渾身の力を振り絞り、走る速度を上げる。

「おい!待てよ!」葛城に呼び止められるがそのまま無視していると、葛城も走って追いかけて来る。

私は警察に追われる万引犯の如く、血相を変えて逃げ出した。

「待てって言ってんだろ!」

大学生にもなって、本気で追いかけっこをしている私達に、すれ違う学生は怪訝な視線を向ける。
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