婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「ここって何の部屋?」

「ゼミの研究室だよ」

確かに四方を囲む棚には書籍がギッシリ並べられている。

研究室で如何わしい事をしてたのか…今更ながら呆れてしまう。

「スカートの裾上げて」

「はぁ?!」如何わしいところで如何わしい事を言われて私は思いっきり顔を顰める

「あの、消毒するから」葛城は遠慮がちに言うとキャビネットから救急セットを取り出す。

「…ああ」勘違いしたバツの悪さから、素直に従った。

葛城は私の前に膝まづくと、テキパキと私の傷口を消毒して、傷跡の残らない絆創膏を貼ってくれた。

「ありがとう」私は捲り上げたスカートの裾を戻しながら言う。

「…昨日は、ごめん」葛城は膝まづいたままボソリと呟く。

そんな愁傷な態度を取ったって無駄だ。私は絶対に許さないと心に誓っている。

「すいません、授業に行きます」私は立ち上がると扉の方へ向かおうとする。

「待って」と言われ、葛城は私の腕を掴む。

「酷い事をいって遥を傷付けたと思う」

「別に本当のことですから」私は視線を合わせないよう俯いたまま言う。

「一晩よく考えたのだけど、やっぱり俺たちは上手くいかないかもしれない。婚約は解消した方がいいかもな」

葛城の言葉に私はハッとして「それは駄目!」と即座に言い返す。

「だってそうだろう、遥いわく俺は婚約への腹を決めかねていないし、遥は俺を毛嫌いする有様だ。お互いこんな感じだったら幸せになれないだろ」

幸せ云々なんて、今更何を言っているんだ、こいつは。私は驚いたように目を見開く。
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