婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
色鮮やかなネオンに彩られた夜の街を葛城と並んで歩く。何故かしっかり手を繋いで。

直ぐ近くに見える東京タワーはオレンジ色に輝いていて、幻想的で美しい。

どうして隣にいるのが中谷先輩じゃないのかと少しガッカリしてしまう。

「相手が俺でガッカリしてる?」

それを見透かしたように葛城は唇の片端を上げてニヤリと笑う。

「そんな事ないですよ。これはこれでアリなんじゃないでしょうか」

超強引で結構失礼な男だが、何故か本気でそう思ってしまうから不思議だ。

「嬉しいことを言ってくれるね」

葛城は私の手を握ったまま引き寄せる。

何ですか?…そう言いかけた時、唇を塞がれる。

フンワリと甘いコロンの香りが鼻腔をくすぐった。

感触は柔らかく、触れ合ったところから、じんわりと熱を帯びていく。

私は何が起きたのか理解出来ずにピシリと固まっていると、葛城はそっと唇を離した。

鼻先で見つめ合うと柔らかな笑みを浮かべる。

「何ですか?今の」

「キス」

葛城はケロリと言い放つ。

「それはわかってます。でもどうしてそんな事するんですか」

頭はひどく混乱しているのに、妙に声は冷めてきっている。

「奥さんになる人のファーストキスを他の誰かに奪われる前に自分で奪っておいただけだよ。ほら、さっきキスまでなら許す、的な事言っちゃったからさ」

「き、キスくらいなら初めてじゃないかもしれないじゃないですか!」

「あれ?初めてじゃなかったの?」

「まあ、そうですが…」図星をつかれた私はバツが悪くて目を横に背けた。

「やった!」

嬉しそうにニッコリ笑う。

無邪気な笑顔はなんだか憎めなかった。
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